2014/06/29

塀の中のジュリアス・シーザー/Cesare deve morire


【物語】 イアリアのレビッピア刑務所、囚人の更生プログラムとして毎年、演劇の公演を行っている。今年の演目はジュリアス・シーザー。

 物語はあるようでない。ほぼない。というかジュリアス・シーザー、がこの映画の物語のほぼ全てだ。   
 囚人たちが更生プログラムの演劇のジュリアス・シーザーの終幕演じているところから始まる、次は時間が戻り囚人たちがオーディションを受け、あとはほぼ稽古の場面。という構成だ。囚人を演じているのは本物の囚人。
 最初の方は囚人同士の会話などもあるが、中盤辺りから稽古シーンのみとなる。実質は刑務所を舞台にジュリアス・シーザーが演じられていく。演劇は舞台の上の役者の演技に吸い込まれていくと、舞台の上のどんな安っぽいセットでも衣装でも本物に見えてくる。嘘が本物になる、この映画もそうだ、観客はいつの間にかジュリアス・シーザーを観ている。予告編の刑務所はローマ帝国へと変貌するというのは文字通りだ(といってもシーザーが殺された直後はローマはまだ共和制だが)。そして本番の舞台で終幕を迎え大喝采の拍手を浴び、囚人たちが再び独房に戻され、映画は終わる。  
 映画の上映時間は76分と短い。が、短さは微塵もない。内容が濃いからだ。本当に面白い映画は時間を感じさせない。アホみたいに長かろうが短かろうが観客はそんなことを感じない。  ある囚人が最後に、芸術を知ってから刑務所は牢獄に変わったと言う。   

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