2014/08/30
シークレット・サンシャイン/밀양 ミリャン 密陽
【物語】※ネタバレあり
シネ(チョン・ドヨン)は夫と死別した。夫が生前、故郷の密陽市で子供を育てたいと言っていたので、密陽市に息子とともに越してきた。
車の修理をしたキム(ソン・ガンホ)は、シネに一目惚れし、住む場所や土地の投資などと何かと世話を焼くが、シネは相手にしなかった。
ある日、息子がいなくなった。誘拐された。シネはキムの修理工場に助けを求めに行ったが、カラオケを熱唱しているキムをみてシネは家に帰った。
シネは身代金を払ったが足りなかった。犯人は土地の投資の話をしっておりシネが金を持っていると思っていたが、本当はシネには金はなかったのだ。金を持っていると周囲に思わせたかっただけだった。くだらない見栄だった。
息子は死体で発見された。犯人はすぐに捕まった、息子が通っていた塾の校長だった。
シネは悲しみのどん底にいた。そんなシネをキムは支えようとしたが、今までと同じように相手にされなかった。
シネはキリスト教にハマった。キムもシネ目当てで教会に通った。何とかシネは立ち直った。辛うじて。
ある日、シネは犯人に会うことにした、そして私はもう許したと告げる決心をした。それが神の教えなのだから。
刑務所で犯人に面会した。犯人に許すと伝えた。犯人は言った。刑務所で自分もキリスト教に信仰をもったと、そして罪を懺悔し許され、今では心健やかに暮らしていると。
シネは受け入れられなかった。教会の人間もキムも、家族もだれもシネを理解出来なかった。
シネは壊れた。万引き騒ぎを起こし、別の教会で騒ぎをこし、教会の仲間を誘惑し、キムも誘惑したが拒絶された。蛇にもなれなかった。シネは壊れた。シネは手首を切り、道行く人々に助けを求めた。
シネは入院し、やがて退院した。向かいに来たのはキムだった。
キムに美容院に連れて行ってもらった。美容師は犯人の娘だった。犯人の娘も父親の逮捕後、色々と荒れて、少年院に入ったりしたようだが、今は立ち直ったようだ。
シネは美容院を飛び出した。家に帰り庭で自分で髪を切った。キムが来て鏡を持ってくれた。
【点数】60点(百点満点)
【感想】※ネタバレあり
まったく予備知識なしに、ソン・ガンホだけ目当てで観たので、不意打ちだ。こんな展開だとは。
愉快な話ではないし、登場人物も全てどこかムカつくような感じで、共感できない。主人公にも共感はできない、悪い人間ではないが、共感できるような良い人でもない、キムにたいする態度も傲慢すぎる。
かといってもキムも良い奴だが、シネの気持ちを全く理解できない馬鹿だ。結婚できないわけも、尽くしているシネに相手にされないわけもわかる。
そんな登場人物に囲まれて、息子を殺されたシネがのた打ち回るような映画だ。途中で観るのが忍びなくなり、もう自殺してくれと何度か思った。
キリスト教ってのは論理的に破綻している。神は全知全能で慈愛にあふれているが、世界はクソ悲劇で溢れてる。この疑問に答えらたキリスト教徒は今までに一人もいない。
シネは本来この一点だけでも受け入れられないのだが、悲しみのどん底で理性をなくした状態では、どうでもよかった。
だが、どんな罪を犯そうが神は許してくれる神は、すでに犯人をその慈愛に満ちた心で許し、犯人に心の平穏を与えていた。それはシネに受け入れられるものではない。
理論が破綻しているから、本当に辛い人を救うことはキリスト教には出来ないのだ。
冒頭にシネに店の内装を変えたほうが良いとアドバイスされ、新参者がうるさいと陰口を叩いたおばさんが最後に出てくる。おばさんは内装をアドバイスどおり変えたら客が増えたと喜び、シネに飯を今度おごるという。そしてシネの髪型をみてどうしたのかシネに尋ねる。シネは美容院を飛び出した答えると、アタマ大丈夫と思わず言ってしまう、精神病院に入院していたシネに。二人は笑う。シネは町に受け入れられたようだ、微かな希望。微かな希望の余韻をもってこの映画は終わる。答えが出せるような問題じゃない。
シネは最後に自分で髪を切っていると、キムが手伝ってやると、鏡を持つ。きっと鏡の位置はづれているに違いない。
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