2014/08/17

レッドブル/RED HEAT


【物語】※ネタバレあり
 ダンコ(アーノルド・シュワルツェネッガー)はソ連のモスクワの警察官だ。

麻薬密売をしているビクターがある酒場にいる情報を得て、ダンコは相棒と部隊を率いて逮捕に向かう。だがビクター一味と銃撃戦になる。相棒はビクターに撃ち殺され、ビクターは海外に逃亡する。
 しかし、ビクターがアメリカでパトロールの警官に微罪で逮捕されたと連絡が入る。ダンコは米国に渡る。シカゴの刑事リジック(ジェームズ・ベルーシ)は上司と折り合いが悪く、ソ連の刑事のお守りというクソ仕事を押し付けられる。ビクターをダンコに引き渡して空港まで護送しようとした時、ビクターの取引相手のクリーンヘッド団が、ビクター救出のために襲撃を仕掛けてくる。
 ビクターは脱出し、リジックの相棒も射殺される。
 ビクターに相棒を殺された二人は、反発し合いながら、二人で捜査を開始する。ビクターから押収したロッカーの鍵とビクターの女から、ビクターとクリーンヘッド団の取引現場の情報を得る。
 二人は取引現場に乗り込み、ビクターを追跡する。激しいバス同士のカーチェイスの末に、ダンコはついにビクターを追い詰め、ビクターを射殺する。そしてダンコはモスクワに帰っていった。

【点数】
70点(百点満点)

【感想】※ネタバレあり
 全体的に映画としての評価は、決して良いものではない。凡作といったところだが、シュワルツェネッガーの役へのハマりっぷり、ジェームズ・ベルーシとシュワルツェネッガーとの掛け合いの面白さ、アクションシーンの切れ味の良さが、この映画への評価をぐっと上げている。
 ウォルター・ヒルはシュワルツェネッガーの魅力を本当によくわかっている。そんなウォルター・ヒルが脚本から参加しているから、ダンコという冗談一つ言わない鉄のような警官というはまり役が出来たのだろう。またオープニングのシュワルツェネッガーの肉体が堪能できるサウナシーンを始めシュワルツェネッガー映画としては100点と言える。
 ダンコの相棒役としてジェームズ・ベルーシ演じる皮肉めいた冗談を四六時中喋っている刑事との、国民性の対比と、掛け合いが本当に笑える。
 またダンコが使う銃のチョイスもいい。最初に使うのはソ連製の馬鹿でかい口径の銃、(これは架空の銃でデザート・イーグルをベースにワルサーP38を加えて、デザインされたのものだ。)次に使うのは、リジックからダーティーハリーも使ってると渡されるS&W M29の6インチだ。私は6インチのリボルバーはバランスが悪くて嫌いだ、4インチまでが我慢の限界だ。でもこの映画では、シックリ来る。やはりシュワルツェネッガーの馬鹿でかいガタイには6インチがシックリ収まってる。安ホテルでクリーンヘッド団に襲われ、シュワルツェネッガーが44マグナムで次々と返り討ちにしていく姿は、心地良い。
 また悪役のビクターが切り札にしているスリーブガン(袖の隠し銃、タクシードライバーで有名なやつ)も、ビクターの個性を反映してて非常に良いのだが、劇中で三回撃つのだが、シュワルツェネッガーに対して使われることがないので、いまいち印象に強烈な印象を残すことが出来ない。

 私はいま36歳なので、子供の頃、この映画はテレビでさんざん観た。今回、おっさんになって改めて観て、問題がある点を考えてみた。

1 二人の絆が深まるシーンが少ない。というより足りない。
2 相棒の死の軽さ
3 ジーナ・ガーションの無駄使い
4 ビクターのインパクト不足とその最期 
 ※1と2、3と4はお互いに密接に関係している。だが全てが関係している。

1 二人の絆が深まるシーンが少ない。というより足りない。
 馬の合わない上に文化も違う二人の刑事が、捜査を通して友情を交わすというのが、この映画の重要な魅力の一つである。だが、絆を深め合うシーンがほとんどない。
 この二人の全く違う刑事の最大の共通点は、同じ犯罪者の事件で相棒を殺されたというものである。だがダンコは相棒がビクターに殺されたことをリジックに告げない。
 途中で、絆を深めるシーンの一つにリジックが銃を没収されたダンコに44マグナムを貸すシーンが有る。銃を貸せというダンコに最初リジックはそんなことをしたら首にされる無理だと突っぱねる。そこでダンコが、銃を没収した署長をKGBみたいな糞野郎だという、お互い大変だなというような意味だ、少し腹の中を晒したダンコに渋々銃を貸すというシーンだ。
 首になるかもしれないのに、外国の馬の合わない刑事に銃を渡すには説得力がない。ここでダンコは相棒をビクターに殺されたことを告白し、リジックに渋々頭を下げるような展開であった方が良かった。そうすればもっとリジックはダンコに共感でき、首を覚悟で銃を貸すのにも説得力がでる。

2 相棒の死の軽さ
相棒が殺された後、ほとんどその死に対してアクションがない、リジックはセリフで二回くらい怒っているというようなのがあるが、添え物程度だ。相棒が殺されたということについて扱いが低すぎる。
 この銃を貸すシーンで、相棒の死を告白し、お互いの怒りを表現するようなやり取りも入れれば、一石二鳥で、相棒の死も重さを増し、傷と怒りを共有し絆も深まる。

3 ジーナ・ガーションの無駄使い
 ジーナ・ガーションがビクターの情婦役で出ている。劇中での扱いは、ビクターがビザ取得の為に金でつって結婚した女。利用され危険な目に合わされ、やばいと感じたジーナ・ガーションはダンコに取引の情報をもたらす代わりに助けてくれと取引を求める。そして首の骨をへし折られ川に捨てられ発見されるという役だ。だが直接殺されるシーンはなく、死体が発見されたというニュースがあり、次のシーンではモルグで死体になっている。
 ジーナ・ガーションが当時無名だったとはいえ、これは無駄遣いだ。男臭いウォルター・ヒル映画の典型のこの映画の紅一点、数分でも彼女がビクターからセックスでもしながら情報を取ろうとして、失敗し無残に殺されるシーンは入れたほうが、良かったと思う。80年台のアクション映画ではやはりおっぱいも必要だ。安ホテル襲撃のシーンで巻き込まれた淫売のがっかりなおっぱいが一瞬映るが、やはり80年代アクション映画にはデカイ銃にでかいおっぱいだ。ジーナ・ガーションはショーガールであれだけ脱いだのだから、きっとこの映画でもそういうシーンがあれば惜しげも無く脱いだはずだ。

4 ビクターのインパクト不足とその最期 
 この映画のダンコの宿敵ビクターだが、いまいちインパクト不足だ。
 冒頭の登場、スリーブガンでダンコの相棒を殺すのはいい、だが次の登場が、信号無視をしたところをパトロール中の警官に見つかり、それがきっかけで逮捕というのが不味い。人間うっかりミスをするものだが、ダンコの宿敵にはそういったリアリティは不要だろう。やはりこの微罪での逮捕は間抜けな印象をあたえるだけだ。だいたい逮捕された時にスリーブガンは持ってなかったのかい!!
 逮捕されるのはビクターの部下の一人にすれば良い、ビクターの部下は取引に必要なロッカーの鍵を持っている、それを奪回するためにビクターが襲撃するのだ。
 そうすば本来、奪回される側だったので、襲撃シーンでリジックの相棒を殺すのはクリーンヘッド団の脇役の一人だが、襲撃側にビクターが回ればリジックの相棒をビクターが殺す事が出来る。 そうすれば、二人の相棒を同じ男に殺されたことになる。二人の共有する傷も深まる。
 次に先ほど書いたジーナ・ガーションを殺害するシーンもないのが、インパクト不足に一役買っている。女房が裏切ったと何気ないやりとりで察知し、やってる最中にスリーブガンで殺すようなシーンが有ったほうが、頭も切れて冷酷な印象がもっと深まる。  そしてこの悪党の最後にスリーブガンが出てこないのも不味い。劇中で三回、スリーブガンが発射される、当然切り札としてダンコとの最後の戦いにも使うと思うが、使われない。  普通の拳銃をぶっ放すが、全身に怪我をしてるせいか、ダンコにカスリもしない。そして44マグナムを全弾打ち込まれて息絶える。全弾撃ちこまれるのはいいが、やはり最後はスリーブガンを使ったほうが良かった。切り札何だし、冒頭での相棒の殺され方が伏線にもなってくる。
  最後に豪快な男らしい対決をウォルター・ヒルはしたかったのかもしれないが、それはバス同士の主面衝突チキンレースでダンコに勝利することで十分に示されている。それに本当に男らしい男ならスリーブガンは使わないだろう。
 だから、冒頭の相棒を殺した時と同じように一旦銃を捨て、隙をついてスリーブガンを抜くが、失敗し射殺されるというのが良かった。リジックが一瞬、早く気が付き、ビクターに一発ぶち込み、ダンコに弾がそれる。そして二人で仲良く全弾ぶち込みビクターを射殺する。初めての共同作業だ。という展開でもよかったとおもう。
 こうすると一箇所チグハグなシーンがあるが、それも解消できる。それはラストの追跡前に二人がギクシャクするシーンだ。ビクターにダンコが銃を突きつけるそこに少し遅れてリジックがやってっきて俺に任せろと!奴はシカゴの刑事の仇だ言う、ダンコが切れてリジックに銃を向ける、その隙をついてビクターが逃走する。取って付けたような仲間割れ展開だ。とくにダンコはビクターを殺そうとしたいてわけでもないので、なんかおかしい。これなら二人は協力しながらもビクターを自分の手で殺してやろうと思っていたことにして、ダンコが殺そうとした時に、リジックが邪魔するという展開にすれば、最後に二人で射殺するという流れにも自然になる。


 シュワルツェネッガーのアクション映画としてはウォルター・ヒルはシュワルツェネッガーの魅力を十分に理解しているので、非常に良い出来だとは思う。が、他のウォルター・ヒルのバディムービー・48時間なんかと比べると大分劣る印象がある。
 だが、二人の掛け合いは時に無性に観たくなる。魅力ある映画だ。

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